1. はじめに: 開脚前屈における柔軟なお尻の重要性
「180度開脚」や「べたっと開脚前屈」に憧れている方は多いのではないでしょうか。開脚が苦手な原因はいくつかあり、もちろん股関節周り、内転筋やハムストリングの柔軟性なども必要になってきますが、このポーズを深めるためには、お尻の柔軟性が非常に重要です。開脚におけるお尻の役割とは、いわゆる「ちょうつがい」です。扉の開閉に作用する「ちょうつがい」は、二枚の扉をつなぎ、その開閉のたびに開いたり閉じたりしています。この「ちょうつがい」が硬いと、扉は開きにくくなり(股関節の可動域が狭くなる)、「ちょうつがい」がゆるい(柔らかい)と、扉は 180度開くことができる(股関節の可動域が広くなる)のです。
2.柔軟なお尻とはなにか
2.1 柔軟なお尻の定義
「柔軟」=「柔らかい」というイメージがありますが、私は、やわらかければ柔軟だ、とは思いません。なぜなら、私自身、もともとある程度柔らかかったのですが、ヨガのポーズはできないものが多かったからです。開脚前屈もべたっとまではいきませんでしたし、その他の後屈や逆転のポーズなどもできるポーズの方が少なかった、もしくはできたつもりになっていました。「柔軟」と「柔らかい」は似て非なるもの。「柔軟」であることは、可動域が広い、筋肉が伸び縮みして自在に動く、ということです。そのため、柔軟なお尻とは、全方位に自在に動くお尻のことです。
2.2 3つのお尻の動き
お尻は、一つではなく、いくつかの筋肉で覆われていますが、そのいくつかの筋肉を駆使して様々な方向に動きます。まず一つは、左右の動き。足を外側に広げる、開脚の動きがこれにあたります。そして次に、前に倒れる動き。これはその名の通り、前屈するときの動きです。最後に、外旋の動き。これはとくにあまり知られていないことですが、外旋、つまり外に回す動きは、開脚前屈をする上で非常に大事になってきます。開脚するときに、足を開くと思っている方が多数ですが、実際には骨の構造上、足を外側に開く動きの可動域は広くはありません。それを、外側に回すことで可動域をひろげ、180度開脚が可能になるのです。
※こちらに関しては、骨格によって180度開脚が向かない方もいます。一般的に開脚は120度ほどひらけば健康を保てるので、無理ない範囲で練習してください。
3柔軟なお尻を作る具体的なステップ
3.1 コンディショニング
コンディションをととのえる、とよく言いますが、スポーツの大会や撮影など何か重要なイベントがあるときに、それに向かって体も精神もととのえて最上の状態で一番のパフォーマンスが発揮できるようにします。日々の体のくせや歪みなどで自分でも気が付かないうちに疲労が出ている可能性もあるので、体をベストな状態にととのえてから練習をおこなった方がより効果的です。
①股関節のリセット
①膝の下にタオルなどを丸めておき、重力から解放する。
②膝の横あたりをもって回す。
③同様に、膝の横あたりを持って上に持ち上げ、そのままストンと落とす。
【ポイント】股関節に隙間をつくるようにひっぱりながら行う。
②お尻のリセット(中臀筋)
①膝の下にタオルなどを丸めておき、重力から解放する。
②お尻の横をおさえて足を 左右に揺らす(外旋・内旋)。
【ポイント】足を動かすのではなく、手で揺らすようにする。
3.2 筋膜リリース
筋膜リリースは、筋肉の硬直を和らげ、柔軟性を向上させるための効果的な方法です。フォームローラーやテニスボールを使って、お尻の筋肉をじっくりとほぐしていきます。特に、筋膜が硬くなっている部分を探し、ゆっくりと圧をかけながらリリースすることで、柔軟なお尻を作る基盤が整います。
【ポイント】脱力が鍵!痛いまではNG!痛気持ちいい程度にしておく。
【痛い時の対処法】
・フォームローラーにタオルやブランケットをしく。
・足を床から浮かせずにつけたままでもOK。
・それでも痛い場合は、お尻のマッサージなどから始める。
①大臀筋リリース
①フォームローラーの上に座り、前後に体を動かす。
②余裕があれば、足を床から持ち上げ、片足のくるぶしをもう片方の足の太ももに引っ掛けて数字の「4」のような形を作り左右に膝を倒す。
②中臀筋リリース
①仙骨にフォームローラーをあて、仰向けになり膝をたてる。
②片足を外側に倒し、お尻の上の方に刺激を感じる。
③大腿筋膜張筋(外もも)
①ローラーの上に体を横にしてのり、大腿骨の横の出っ張りの大転子にあてる。
②体を上下に動かし、体重をかけながら外もも全体をほぐす。
③余裕があれば、足をそろえて床から離す。
3.3 外に開くお尻の作り方
足を外側に開く動きを外転と言いますが、この外転の動きに作用しているのが内転筋(内もも)です。日常生活であまり使うことがない部位のため、カチカチになっている方も多く、まずは使って、あたためてから徐々に伸ばしていきます。
①ウォームアップ
①仰向けに寝転がり、内ももにブロックかクッションなどを挟む。
②そのままブロックを落とさないように足を上げ下げする。
①ストレッチ Level.1
①足をひらいて座り、膝を曲げる。
②両手を足の内側におき、肘で膝を外側に押し出すようにする。
このとき、腰を丸めないように注意する。
③余裕があれば背骨を伸ばしたまま前に倒れられるところまで前屈する。
②ストレッチ Level.2
①足を肩幅より広く開いて立ち、つま先を外側に向ける。
②骨盤を立てたまま腰を下におとし、太ももが床と並行くらいになったら(膝は90度)そこでキープ。
膝と足先の向きが同じ方向に向くようにする。
3.4 前に倒れるお尻の作り方
開脚前屈は、足を外側に開く開脚の動きと、前に倒れる前屈の動きがあわさった複合的なポーズです。そのため、前屈が苦手な方も、開脚前屈を練習することで、前屈が深まっていくこともあります。前屈するためには、お尻の後ろ側からハムストリングの柔軟が必須です。
①ウォームアップ
①仰向けに寝転がり、ブロックの上に足をひっかける。このとき、膝は120度くらいにすることで太ももの裏側にも効かせる。
②骨盤を後傾にしてお尻を上げ下げする。
①ストレッチ Level.1
①仰向けになり、両方の足を前にまっすぐのばす。
②片方の足のふくらはぎあたりを持ち、自分の方に引き寄せる。膝は曲げてもいいが、足首をフレックスにして、おなかと太ももをちかづけるようにする。
③余裕があればつま先をもち、すねとおでこを近づける。
②ストレッチ Level.2
①片足を外側に曲げて座り、背骨を伸ばす。
②足のふくらはぎあたりをもち、お腹と太ももを近づけていく。
③余裕があればつま先をもち、すねとおでこを近づける。
3.5 外側にまわるお尻の作り方
開脚前屈で鍵となるのは外側にまわす動きです。股関節の骨の構造上、この外旋の動きができなければ、開脚は難しくなります。股間節を動かさないことから、癒着などが起こり、この外旋の動きが苦手な方が多いのです。お尻の外側をほぐして、外にまわるお尻をつくりましょう。
①ウォームアップ
①足を腰幅くらいに開いて座り膝を曲げる。背中は丸めないで骨盤を立てる。
②片足ずつ内側にまわし、なるべく膝を床に近づける。
①ストレッチ Level.1
①四つ這いの姿勢から片足を一歩後ろにひき、両手を前足の内側において肘をつく。
つけない場合は、ブロックを下におく。
②前足を外側に倒していき、小指のエッジに重心を乗せる。親指側は浮いてもOK
②ストレッチ Level.2
①仰向けに寝転がり、足をのばす。
②片足を曲げて自分に体の方に抱え込み、できればすねと胸を近づけるようにする。
4. 練習の効果を最大限にするために
4.1 毎日続けることの重要性
柔軟性は一朝一夕で手に入るものではありません。毎日少しずつでも続けることが、柔軟なお尻を作り、開脚前屈を深めるための鍵です。特に座り仕事が多い方などは、お尻ががちがちになってしまいがちです。練習はヨガマットの上でなくでもできます。たとえば、私は以前会社員だったとき、小さなボールを会社に持ち込んで、お尻の下にひいてデスクワークをこなしていました。今でも、長時間フライトの際などは、必ずボールを持っていき、暇さえあればほぐしています。このように、日常生活の中でどれだけ意識ができるか、それが柔軟の鍵になっていきます。
4.2 食事と生活習慣の整え方
前述のとおり、柔軟はただ柔らかいことではありません。適切に筋肉がついていて、かつ、その筋肉が柔らかく、自在に伸び縮みでき、可動域が広い状態。ということは、柔軟性を高めるためには、筋力も非常に重要になっていきます。筋肉を作っているのは、日々食べているものや、睡眠などの生活習慣も関わってきます。特に、筋力をつくるタンパク質やビタミンCを含む食材を積極的に摂取することで、筋肉の回復と柔軟性の向上をサポートします。また、質の高い睡眠をとり、ストレスなどを軽減することで、柔らかい筋肉がしっかり育ち、リカバリーできる環境を整えましょう。
5. 柔軟なお尻を手に入れ、開脚前屈ができるようになった未来
5.1柔軟なお尻を手にいれるメリット
柔軟なお尻を手に入れることで、もちろん開脚前屈が深まりますが、メリットはそれだけではありません。お尻の筋肉は、体の中でも大きな筋肉。ここを柔軟にすることは、全身の血の巡りをよくし、むくみの解消や代謝UPにもつながります。また、普段の姿勢や歩行などにも関わってくる部位なので、結果的に、体全体の柔軟性があがっていくでしょう。
5.2柔軟なお尻を手にいれるとヨガ講師として自信が持てる
私は昔、レギンスを履いて生徒さんの前に立つのが嫌でした。なぜなら、自分のお尻に自信がもてなかったからです。なんとなくぼわんとしていて、足とお尻の境目もあまりなく、若干たれぎみなお尻。レギンスは足やお尻のラインがはっきりみえてしまい、恥ずかしい・・そう思っていたからです。長めのトップスや、少しゆったりめのヨガパンツなどをいつも探していましたが、ポーズのお手本が一番見せやすいのは、レギンスですし、レギンスを履いたときにきゅっとあがったお尻ってヨガインストラクターらしくていいな、、と実は憧れていました。それが、「柔軟」なお尻を手にいれたことで、お尻の形も変わり、生徒さんの前でも自信を持って立てるようになりました。たったそれだけのことですし、たかが見た目の話なのですが、ヨが講師として自信が持てる、また、生徒さんにあんなふうになりたい!と憧れてもらえるために、見た目じゃない、といえども、見た目もある程度は重要なのではないか、と私は思っています。
もちろん、見た目だけではなく、お尻を柔軟にする方法を自分が体感したことで、ヨガ講師としての指導力も確実に上がりました。これは、私だけではなく、講座生さんも口をそろえていうことですが、自分の実感を込めてレッスンをすることで、生徒さんの体も変わり、生徒さんに感謝の声をいただけるようになるのです。これは、ヨガ講師にとって一番に実現したいことではないでしょうか。
6. まとめ: 柔軟なお尻を作ることで得られる開脚前屈の進化と自信
柔軟なお尻を作ることは、開脚前屈を深めるだけではなく、ヨガ講師として自信をもつことにもつながります。全方位に動く、ただ柔らかいだけではない、真に「柔軟」なお尻を手に入れ、体の変化を実感することで、ヨガ講師として活躍できる未来が手に入るでしょう。
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